ピンクフラミンゴ

綺麗にお酒を飲める大人になりたいなって思っている。

 

俺は10代からずっとバーで働いていたから沢山のお客さんを見てきたけど、綺麗にお酒を飲める人なんて1.2割しかいなかった。

 

残りはクダを巻いたり灰をテーブルいっぱいに撒き散らしたり、暴力を振るう人もいたな。

もちろんお酒を飲んでいるから仕方がないしこちらも割り切ってはいるんだけど、たまにいるきれいにお酒を飲む人を知っているからこそ不思議に思っていたっけ。

 

汚したテーブルをお手拭きで拭ける人やお礼を言える人やちょっとした気遣いを見せてくれるほんの少しの優しさが珍しい世界だった。

 

だからこそ俺は綺麗にお酒を飲める大人になりたいって当時は思っていたんだけど、合コンで向かいの席に座っていた女の子があまりに生意気です言い返しているうちに酒に飲まれてしまったことがあった。

22歳の冬だった。

寒くて寒くて体が冷えていたからみんなで熱燗をあおっていたんどけど、どんどんピッチが上がっていって最終的には家の横の駐車場にいた。

地元から遠く離れた駅で飲んでいたはずなのに。

俺は何も覚えていないから暢気にSNSを更新して友達から連絡があった。

「なんも覚えてないのか?」

 

あれは背筋が凍ったね。

おれは熱燗を飲みすぎてテーブルにゲロをぶち撒いた挙句友達に家までタクシーで送ってもらったらしい。

なりたくない大人になっていた。

仕事をしながら、ああはなりたくないよなって思っていた悪い見本そのままだった。

女の子に悪態をついて酒に飲まれて友達にも迷惑をかけて暢気に風呂入ってSNS更新して。

酒に飲まれちゃう人っておぼえてないんだろうな。

反省のしようがないんだきっと。

 

その日から俺は極端に酒を飲むのが怖くなってほとんど飲まなくなってしまった。

飲みに行くことはあれど、飲まれるようなことはその日以来一度もない。

 

今にして思うのは綺麗に飲んでいると思っていた人たちもどこかで演じているような部分があったのかな。

俯瞰して、こうしたほうがいいなって考えながら飲んでいたんだろうか。

少なくとも俺はそう考えながらじゃないとまだ綺麗に飲めない。

それが自然体になったとき初めて大人になれる気がするのだ。