バーテンダー
人生で嬉しかった瞬間ってありますか?
俺はバーで働いていた20歳くらいの時かな、バーのマスターに初めてスナックに連れて行ってもらったのがとても嬉しかったな。
その日はお店のお客さんを招いてバーベキューをした日で、俺を含めスタッフは営業終わりに早く集まって準備とかをするわけです。
ヘトヘトになる程の量を自転車で買い出しに行き、仕込みをするわけです。
お客さんが来た後は料理やお酒の準備をしたり、子供を連れてきた人がいたらその子供の面倒を見たりするわけです。
そんなこんなで昼過ぎから夜9時くらいかな、どんちゃん騒ぎでしこたま酒を飲んで、何回も買い出しに行かされて子供とかけっこをしたりしてヘトヘトなわけです。
片付けも膨大な量で、小さなバーのシンクで洗い物をするんですよ。
腕がさばくみたいにカサカサになるまで洗い物をして、バーベキューセットも片付けるわけです。
その後は大抵みんな二次会に繰り出すのですがそこで何組かに分かれるわけですよ。
俺たちは主催側だから、その何組かにばらけてついて行かなきゃいけないわけで。
3組くらいに分かれてて、お店側は自分と店長と、マスターと働いてた女の子2人。
まあみんな1人か2人でそれぞれのお客さんの二次会に顔を出すわけです。
それがまたしんどくて、給料もでないやつだからモチベーションが上がらないんですね。
前日21時〜6時で営業して、そのあと10時から仕込みして21時ですよ。
そこから二次会でまた接待しなくちゃいけなくて。
いくら若かったとはいえ、流石にしんどかったですね。
面倒だななんて思っていると、マスターが裏口でこっそり耳打ちするんですよ。
「一緒にふけてスナックいかないか?」
とても魅力的な提案に二つ返事で首を振った俺は迎車を呼んで2人でこっそり乗り込んでそのまま夜の街に繰り出したんですよ。
鳴り止まないケータイを無視して、その後に連れて行ってもらったスナックはまだクソガキだった俺には大人の世界で、すごいキラキラしているお店と綺麗なお姉さんとお酒が出てくるんでまるで夢見てるみたいだったな。
カラオケを歌って、お姉さんと喋って緊張して、そんなこんなで帰りしなにマスターがチーママにオムツ代にしなって1万円をさらっと渡すんですよ。
かっこよかったなあ。
真似したいですよいつか。
マスターはこれも経験だからって言ってくれてたけど、一番年下の俺に気を使ってくれていたのかななんて思ったり。
普通じゃできないような経験をたくさんさせてもらったのは、間違い無くマスターがいたからでした。