青春の殺人者
夏になると『僕たちと駐在さんの700日戦争』を見てしまう不思議な習慣がある。
あのキラキラと輝いた誰もが憧れる純度100%の青春。
俺には手が届かなかったなと回想するのである。
不良がかっこいいと思いはすれど、やっぱりそんな覚悟はなかったから、ヤンチャで人望があって楽しい毎日を送るママチャリたちを羨んでいるんだろう。
たぶん彼らが同級生だったら、俺は遠巻きに眺めて羨んで1人帰路に着いて、バイトにでも向かうんだろう。
実に味のしない、発泡スチロールみてえな青春である。
ぼくちゅうは読みやすく心の琴線に触れるとても不思議な気持ちになる小説だ。
凝った文章でも、叙情的なわけでもないけど、ありありと青春を書き連ねるママチャリさんのセンスには感服させられる。
当時の匂いや記憶を、そのままぶつけてくるような、とても心にしみる文章なのだ。
花火盗人は映画版の大きな核を担う話だが、小説版ではそれ以外にも沢山の名作がある。
俺はプロポーズはテノールでと走れ!チャーリー号が特にお気に入りだ。
2つとも高校生の青春をど直球に、そして彼らは無鉄砲だけど、子供だから支えてくれる優しい大人の支えもしっかりと描いていてとても心に沁みる。
晴れた日に陽を浴びながら海水にプカプカと浮かんでいたら沁みてくるような、そんなじわじわとした感覚なのだ。
映画の話に戻るが、栃木県で撮影されたこの作品は素晴らしい田舎感を演出している。
昭和の、田舎特有のレトロ、昭和キネマと歌謡曲なのだ。
そして高校生の世間知らずと、自分が無敵で間違っていないと突き進んでしまう無鉄砲さ。
優しい大人。
本当にいい映画。
友達のためならなんだってやれるって胸を張れるのも青春特有の小っ恥ずかしいやつ。
それを真正面から描いてくれるから心にくるのだ。
世間的にはあまり評価が高くないけど、僕にはオールタイムベストな作品だ。
それでは
マシニスト
俺は嘘つきだ。
小さな嘘から大きな嘘まで今まで何回ついてきたんだろうと思う。
口から出た時は大したことないんだけどあとから思い出して死にたくなるくらい悔やむ。
なんてちっぽけなことで嘘をついたんだろって。
何度治そうとしても治らないし、嘘をついて手に入れた人間関係はリセットして忘れることにしてきた俺は、もう嘘依存症なんだと思う。
小学生のときは、よく先生に嘘をついていた。
宿題をやりたくなくて家に忘れた、わざと自分の血をプリントに塗ったくってイタズラされたなんて今思えばドン引きの嘘をついたりしていた。
たかだか宿題のために。
学校をサボるのも恒常化していた。
両親は4人の兄弟を育てて、年の離れた俺を産んだ。
母は四十を過ぎていた。
バッチの子だった俺は甘やかされて育ち、すくすくと嘘をつくようになった。
家の中で常に褒められ、認められていた俺は外でもそうありたくて、仮初めの自分を演じていたんだと思う。
それがどんだけ虚しいことか、タイムマシンがあったら見に行きたいね。
別に諭したりはしないけど。
そんな幼少期の俺が塞ぎがちになったのは野球を始めてからだった。
デブで大柄で、喘息持ちだった俺は4年間続けた野球が下手くそでお情けで背番号をもらう体たらくだった。
身体だけは大きいから上手く見られがちで、期待した目で俺のプレーを見て失笑する父兄やコーチが多かった。
当時はそれが本当に恥ずかしくて、悔しくて、でも喘息があるから満足に走ったりもできなかったからずぶずぶ続けても呆れられることしかなかった。
それでも辞めなかったのは、友達の目があったからだった。
俺のいたチームはほぼ全員同じ小学校に通っていて、やめたらなにを言われるかわかったもんじゃなかった。
監視の目に近かった。
もしやめたら後ろ指をさされて、コソコソと悪口を言われるのではないと思っていたのだ。
6年生の時、チームのキャプテンはいつも俺を仲間外れにして、二人一組でやるストレッチでも余って、俺は家で悔しくて惨めでやるせなくて泣いてた。
たまに一緒に遊べば鬼ごっこで延々と鬼をやらされて、逃げるふりをして家に帰られてずっと街中を探し回ったこともあった。
子供は残酷だ。
加減を知らないから。
そんな時、キャプテンの妹がすごく優しくて、鬼ごっこでもういないやつらをウロウロと探している俺を見かけて、家に帰っていた兄を怒りにいってくれたことがあった。
年下の、それも同級生の妹に庇われるのは最大に恥ずかしくて俺はもう死にたくなった。
本来なら6年生でも低学年のチームの試合に出る実力しかないのに、公式戦となればお情けでベンチ入りして同級生や下級生の使ったバットを片付ける係をやらされる。
本当に惨めで、毎週金曜の夜は天気予報に電話して雨を願った。
のちに見た映画で「雨を祈るなら、ぬかるみに注意しろ」と主人公が言っていた。
今にして思えばウジウジと雨を待ち望んでいるような俺は上手くならなくて当然で嫌われ者になるべくしてなっていたのかもしれない。
けれど当時相談できる相手もいない俺は塞ぎ込むしかなかった。
友達もろくにいない俺はよく自転車で地元を徘徊してた。
裏道を見つけてはニヤニヤとするような。
そんな孤独で悲しい遊びをしていた。
公園を見つけてはそこで遊ぶ自分の同じ歳くらいの子供たちを遠巻きに見つめたり。
児童館に行って漫画を読んだり、週一回知らない子たちとドッチボールをしたり、本当に孤独で虚しかった。
17時くらいまで外に無理やりいて、あとは家でずっとアニメを見ていた。
本はたくさん読んだ。
デルトラクエストやアレックスシアラーの本は母親が買い揃えてくれた。
海外の作家が好みだったけど、母親に勧められて赤川次郎を読んだりもした。
イチローのメジャーリーグに挑戦するまでの本を読んでイチローですら高校で一度野球から逃げ出した話を見て変な部分でシンパシーを感じたりしていた。
映画もたくさん見た。
徹底的な放任主義だった俺の家は、自分で止めるまでずっとテレビを見ていられた。
ベートーベン、ベイヴ、ホームアローンやスモールソルジャーが大好きだった。
中でも、ロジャーラビットはビデオテープが擦り切れるまで何度も何度も見た。
テレビ番組も、夜更かししてたくさん見て、お笑いが好きになった。
小学生のうちに1人遊びの流れを作ってしまったのは今となっては良かったと思う。
お笑いライブに通い、そこで友達を作り、嘘をつき、ある程度遊んで慣れたらそこから消えてリセット、みたいなことをやったりもしていた。
映画館や個展に通い、本を読んだりするととても満足して孤独を忘れることができる。
ふとしたとき虚しくなるけど、ふとしないときのほうが多いのでなんとかなる。
そんな今の基礎には、やはり小学校のころの自分が大いに関わっているのだと思う。
人格形成というか指針というか、なにかを選択するとき、知らず知らずのうちに昔から好きなものを選びがちだ。
今でも予定を計画するのは苦手で、断られたり忘れられるのが怖い。
対人関係がからっきしダメだ。
それでもなんとかやりくりはできている
今日はこの辺にしておこうと思う。
それでは
氷の処刑人
今年もあと2ヶ月で終わりますね。
早いもので夜になる時間が早くなると冬を実感しますね。
ついこの間まで18時くらいまでは夕日が出ていた気がするのに今では17時には真っ暗です。
先月はたくさん映画を見まして、ムタフカズや高崎グラフィティはとても良い映画だと思いました。
ムタフカズは、GTAのような街が舞台のストーリーで掃き溜めに住む若者と謎の組織のバトルが疾走感があってとても楽しめました。
高崎グラフィティは地方都市に住む若者の悩みと、青春を少し遠回しにじわじわと展開させる.心に染み渡るストーリーでした。
とても感銘を受けて上映後のトークショーでは思わず質問をしてしまいました。
先月のベストはこの2本ですかね。
あとは東京国際映画祭に出かけてshall we ダンス?を見たら役所広司さんのトークショーが開催されて1300円で生の役所広司さんを拝めてとてもお得だと思いました。
去年はアニメ映画を中心に、今年は普段自分から率先してみるジャンル以外を中心に映画館に足を運んでいます。
約60本スクリーンで鑑賞しましたが、飽きることはないですね。
それどころか時間がもっとあればなと上映スケジュールとにらめっこしている毎日です。
年末になったら今年見た映画を全部まとめておこうと思います。
文字に残すと、また思い出が蘇るような気がするので。
それでは
花とアリス
かねてから行こうと思っていた服屋があるのですが、いかんせん出不精かつ地元愛に満ちた僕は電車に乗るのを億劫に思ってしまうわけですね。
来月もいろいろな予定がありますが、そろそろショッピングにいって発散したいなと思っています。
9月はロッキンジェリービーンさんと寺田克さん、空山基さんのお三方の個展に行きました。
どエロくて鼻血が出るかと思いました。
エロってアートを一枚噛ませるとよりエロく、そして美しさを感じさせますね。
盗撮写真なんかより僕はエロい気がしますよ。
あとは友達がお財布を買っているのをみて僕も変えたくなりましたね。
あと2年くらいは使えるかな?と思っていたんですが人が買い物をしているのを見ると影響されちゃうんですよね。
ゼニアの財布だったかな友達が買ったのは。
とてもいい財布だった。
こんな感じですね。
それでは
きみの鳥はうたえる
いつもと同じ。
ありきたりだけど、そんな毎日こそ大事にすべきなのだ。
人類は一夜にして進歩したわけではなく、日々の積み重ねを大事にしたからここまで来れたのではないか。
だから僕はなんてことない仕事の日を大事にしたいのだ。
進歩するためにも。
家と職場の往復にも、楽しみはある。
明かりは少なく僕が生まれるより前から営んでいる文房具屋と向かい合った中学校があるあまり大きくない通学路に、そっと寄り添うようにたたずむ自販機がある。
僕は仕事帰り毎日その通りを自転車で抜けていくのだが、暗く見通しの悪いとおりの光源になっている自販機が帰りを待っていてくれる母親のように見えるのだ。
疲れた身体に、その自販機で買った缶のコーラを一気に流し込むと、なんとも言えない癒しを得るのだ。
みたいなね。
サマーウォーズ
1人で映画を見たことはありますか?
僕が初めて1人映画を体験したのは中学3年生の時でした。
中学3年生の夏休みは今まで続けた部活とクラブチームの引退後でしたので毎日友達と遊んでぐうたらしていました。
間近に迫った受験のことをあえて無視していたようにも思いますし、中学3年間野球に費やしていた夏休みを取り戻そうとしていたフシもあったと思います。
プールに行き、地元のショッピングセンターでご飯を食べ、あてもなく自転車でぐるぐるしたりあの当時、僕や僕の友達はみんな受験から逃れるために孤独を恐れていたのかもしれませんね。
そんな中で夜更かしも毎日していました。4時くらいまでPCで音楽を聴いたり、動画を見ていたり。
ある夜、テレビをつけると来月公開の映画の宣伝をしていました。
たしかエヴァンゲリオンの再放送の前に短いコーナーとして組み込まれていた気がします。
その番組でキャイーンの天野さんが紹介されていたのがサマーウォーズでした。
当時は彼が細田守さんという名前で、僕ら世代が夢中になったぼくらのウォーゲーム!の監督だったなんて知る由もありませんでした。
家族の絆がテーマであること、オンライン上の仮想空間が舞台であることがわかり、SFやアニメに興味があった僕は見たくてたまりませんでした。
ただ、夏休みの予定はお盆あたりまでぎっしり埋まっていて映画に行く隙がありませんでした。
僕は毎日テレビをつけるとやっている宣伝を見るたびに見に行きたい気持ちを刺激されて、田舎のおばあちゃん家にいても、友達と朝から甲子園を見ていても、宿題をしていてもその悶々とした気持ちはなくなることはありませんでした。
今にして思えばパッと見に行っちゃうだけの時間も余裕もあるはずなのですが、当時はアホ中学生だし、お小遣いは月2000円でしたので1000円の出費はあまりにも大きかったのです。
それに、夏休み前半、遊びすぎて所持金はお年玉込みでも1000円ちょっとしかなかったと思います。
そんな生殺しの状態が二週間ほど続くともう耐えられなくなり気持ちがピークに達した日の朝、お母さんに映画を見たいからお金をくれと言いに行きました。
野球をやっていたのでたくさんお金を使ってもらっていたのも分かっていたし、お小遣いをもらっているのも分かっていたのですが、夏休み遊びすぎてお金のなかった僕は訴えるしかありませんでした。
服を洗濯機に放り込みながらお母さんはいいじゃないといい、あとでお金置いとくから行っといでといいました。
あっさりとお金をもらえた僕は、ルンルン気分で友達を誘いましたね。
たしかお盆過ぎで、僕たちの地区は一週間早く夏休みが終わるのでみんな宿題に追われていだのを覚えています。
そのせいで友達が捕まらず、ルンルン気分な僕はどうしてもその日に見たかったので近所の映画館まで1人でチケットを買いに行きました。
夜7時の回、中学生には少し遅い時間でしたが、ほとんど席が埋まっていて最前列しか空いていなくて、僕は最前列の真ん中の席を購入しました。
初めて1人でチケットを買うこともドキドキしましたね。
大人の階段です。
そして一度家に帰り、万全の状態で映画を見るために仮眠をとることにしたのです。(ここまで朝から10時過ぎ)
夕方、僕は起きるとこれから1人で映画を見るドキドキに、高まっていました。
絶対面白いとなぜか確信していたのでハードルはだいぶ高かったはずです。
いざ映画館に入ると、チケットを買いに来た時とは違って見えました。
朝は鼻をくすぐるキャラメルポップコーンの匂いや、ふかふかしていて少し足を取られる絨毯のことなんて全然気がつかなかったのです。
いざ映画を見るために来たこの今の雰囲気がとてもムードを作ってくれて、すごくワクワクしましたね。
そしてなぜか僕は、この映画館の雰囲気を懐かしく思ってこの気持ちを大事にしたいなって思ったんですよね。
アナウンスがあり、係員にチケットを見せてシアターに入り、席に着く。
これだけで感動するんですよ1人だから。
そしていよいよ映画は始まるわけです。
最前列で見るサマーウォーズの迫力は本当に凄かった。
ラブマシーンやキングカズマの戦闘シーンやおばあちゃんとみんなの絆、それが最前列から見上げているので迫力があり本当に本当に感動して涙が出ました。
見終わったあと、今までは映画を見たなら友達や家族と感想を言い合いましたが、その相手がいないので僕は1人で反芻するしかないんですよね。
その時間がまた大事なんです。
帰り道作品について考えて、より好きになる。
この時間が好きで、本当に見たい映画は1人で見る癖がついてしまいました。
そんな1人映画デビューの話です。
それでは。